桑蚕シルクの寝具は「22 momme、6A グレード」と並べて売られることが多い。ひとつの品質スコアに聞こえるが、momme は単位面積あたりの織物重量、6A は生糸取引で使う繊維長・欠点の等級区分であり、測る対象が違う。両者を同じ指標のように扱うと、見た目は精密なスペックシートでも、手触り・耐久・表示組成の試験適合を予測できない。
ラベルが混同される理由
輸出カタログやハングタグでは、momme とアルファベット等級が一行に並ぶのが常套だ。実務では次のとおり。
- Momme(mm):織ったシルクの重さ。シルク業界慣習の g/m² 換算(1 momme ≈ 4.340 g/m²)。momme が高いほど糸の充填や織りが重いことが多いが、繭等級が自動的に上がるわけではない。
- 6A(5A、4A…):繭/繊維の選別由来。長く欠点の少ない連続繊維ほど高得点。生糸ロットに付与され、織・染・仕上げで最終品は形を変える。
22 momme の掛け布団カバーが 6A 糸で織られていても、momme は 6A を証明しない。6A 生糸は製品目標に応じ 16 momme や 30 momme で織れる。「6A は重く感じるはず」というスペック前提で 19 momme シーツを却下するのは、この混同が原因になりやすい。
寝具で momme が実際に変えること
Momme は織シルクの 密度プロキシで、綿の GSM に近い役割であり、柔らかさグレードではない。
- 16〜19 momme:シャルムーズ枕カバーやシーツ表地に典型。ドレープがよく乾きやすく、容積重量・運賃面で有利。
- 22〜25 momme:高級シャム、掛け布団カバー、ボックスウォール掛け布団シェルで一般的。耐摩耗性と手元のボディ感が増す。
- 30 momme 以上:インテリア用や特殊シルク。大量寝具 SKU ではコストとロフトのトレードオフで稀。
同じ momme でも織組織で感触は変わる。22 momme 平織ハボタイは、22 momme サテンより軽く読まれる。糸浮き長と糸数が違うためだ。Momme 単独では織りを指定せず、仕上げ後重量のみを示す。
サプライチェーンでの 6A グレードの使われ方
アルファベット等級(6A トップ、市場により 3A/4A/5A へ段階)は、生糸競売・糸車段階の繊維指標を要約する。
- 繊維長:長い連続繊維は細糸の継ぎ目が減り、糸車後の面が滑らかになりやすい。
- 欠点数:ネップ、太細部、切れ糸で等級が下がる。
- 糸車均一性:房全体でデニールが揃うと後工程の染着が均一になりやすい。
脱膠・撚り・染色・カレンダー後、元の房等級を完成掛け布団で再試験することはない。小売タグの「6A」は、多くの場合トップ桑蚕の 商慣用略称であり、その反物に結びついた証明書ではない。ラボ検証は組成・繊維同定が中心で、momme とは無関係だ。
momme と等級を同一視せずスペックを読む
有用な製品文書は層を分ける。
各次元を明示する
- 組成:「100% 桑蚕シルク」と重量比の繊維含有。経糸/緯糸の差があれば記載。
- 仕上げ momme:プレシュリンク仕上げ後の納品反で測定。生機ではない。
- 織り:シャルムーズ、ハボタイ、ツイル。1 momme の差より手触りへの影響が大きいことが多い。
- 生糸等級の参照:謳うなら SKU 名ではなく糸ロットのサプライヤー COA に紐づける。
答える問いが違う試験
- 繊維同定(顕微鏡/ISO 17751):桑蚕対タッサー対合成ブレンドの確認。momme とは無関係。
- 単位面積重量:裁断する反の momme を検証。
- 染色堅牢度・寸法変化:仕上げ品質。6A 糸でも精練不良なら任意 momme で洗濯試験に落ちうる。
Momme と等級:それぞれが予測するもの(参考)
| パラメータ | 測るもの | 測らないもの |
|---|---|---|
| Momme(仕上げ反) | 重量密度、容積重量・運賃、耐摩耗マージン | 繭等級、繊維長、シルク純度 |
| 6A 生糸等級 | 糸車時の繊維長・欠点 | 仕上げ momme、染色堅牢度、収縮 |
| 22 momme シャルムーズ対ハボタイ | 織り起因のドレープ・光沢 | 上記パラメータ(別途試験しない限り) |
掛け布団シェルでは 22 momme シャルムーズがプレミアムの定番アンカーになりやすい。シェル耐久に十分なボディがあり、30 momme 超のインテリアシルクほど硬くならない。仕様に「6A」が出るなら、下の糸等級も別途トレーサビリティが要る。
まとめ
22 momme と 6A グレードは別の問いに答える。仕上げ後の織物重量対、織前の生糸品質だ。妥当な寝具スペックは組成・仕上げ momme・織り・仕上げ(プレシュリンク、染料クラス)を別フィールドで列挙する。織りや仕上げ詳細なしに一行へ積んだ文書は、momme を上げれば繭等級や手触りも上がると仮定するのではなく、フィールドの明確化と目的別試験で埋めるのが筋だ。